Unfiltered On the Ground 議員と話し、地道に夫婦別姓を訴える
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選択的夫婦別姓・全国陳情アクション 上田めぐみさん
私が中学生だった1990年代前半には、民法改正要綱を答申するための法制審議会が開かれていました。メディアでも、選択的夫婦別姓(※Unfiltered 注)のことが報道されていたので、気になっていました。
「なぜ女性ばかり姓を変えるのか」ということに疑問を抱いていたのですが、そのことに関して話をできる人が周りにいませんでした。
もやもやした気持ちのまま高校に進学したところ、家庭科の先生が授業でこの話を取り上げてくれました。
当時、家庭科は女子だけが受ける授業。結婚しても改姓したくない同級生が他にもいたので、自分だけではないこと、自分の考えは間違っていない、という確信が持てました。
選択的夫婦別姓の問題をもっと学びたいと思ったので、メディアで広く発言していた立命館大学の二宮周平先生のゼミを迷わず選択。家族法やジェンダー論を学びましたが、学びを深めるためにイギリスの大学院へ進みました。
海外で勉強や仕事をする中で、日本が世界的にかなりジェンダー不平等な社会ではないかとは思っていましたが、選択的夫婦別姓制度については「そのうち変わるだろう」という希望は捨てていませんでした。
ところが2015年、選択的夫婦別姓を求める第一次訴訟が最高裁に上告され、(カップルに同一姓を事実上強制する現行民法が)合憲だという判決が下されました。
その日、私は出張でウガンダにいたので、朝早くからインターネットで流れる日本のニュース速報を見てホテルの部屋でひとり落胆しました。
帰国して以降、耳鳴りとめまいが止まらなかったのですが、敗訴したショックが原因だったと今でも思っています。
「20年以上も制度改正に向けた活動が展開されているのに、まだだめなのか」という強い思いから、2018年の第二次訴訟では、自分も原告として加わろうと考えました。
ただ、第二次訴訟の戦略は、事実婚のカップルが「夫の氏」「妻の氏」両方にチェックを入れた婚姻届を提出して不受理になることに異議を申し立て、民法改正を求める裁判と家事審判との両方で争うことでした。
私は、不受理になることがわかっているのに敢えて婚姻届を提出することに違和感がありました。パートナーに相談すると「せっかく提出するなら受理される婚姻届を出したい」と希望したため、原告になることは断念しました。
その代わりに、「別姓訴訟を支える会」や「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」のメンバーとして活動に参加することにしました。
議員は夫婦別姓の訴えを知らない
全国陳情アクションに参加して、気づいたことは多くあります。
はじめは政界という意思決定の場が「おじさん社会」だから選択的姓が通らないと考えていたのですが、それ以前に多くの議員が「関心がない、知らない」のです。
「考えたことがなかった」と答える議員が一番多く、無関心の議員が非常に多いことに驚きました。
個々の議員と面会して、事実婚のデメリットや法律婚での旧姓使用の煩雑さといったこと、婚姻で女性の側がたいてい姓を変えなければいけない仕組みであると女性側がいかに困るかを伝えると、真剣に耳を傾け、力になろうとする人もいます。
「自分は男だから苗字を変える必要はない」と思っている議員もいますが、現行法でも半分の確率で男性側にも起こりうる。でも、彼らにそういう意識はないようです。
強く反対している議員の中には、自分が改姓している人もいますが、そういう人に限って「自分もなんとかやってきたんだから、あなたもできるはず」と精神論を主張します。選択的夫婦別姓は、同姓を選びたい人への影響はなく、婚姻後も自分の姓を名乗り続けたいと希望する私のような人が困っているからなんとかしてほしいとお願いしているわけです。
夫婦別姓への反対論者は圧倒的に男性に多いですが、自民党では女性議員が矢面に立ち、あたかも女性も中心となって反対しているような構図がつくられています。
自民党の女性議員の多くは、自身が改姓を経験しているので問題を理解していると思いますが、彼女たちは支援者や支持母体におもねっているのではないでしょうか。
昨年から統一教会の問題がクローズアップされるようになっていますが、以前から日本会議や神道政治連盟といった団体が、全国的に夫婦別姓の反対運動を展開し圧力をかけています。
地方から理解を広げる
そうした中でも、地道な活動が実を結んでいます。
自分の居住区の議員が話を聞いてくれるようになり、議会が意見書を2度可決したのです。
完全な理解ではなくとも、わかろうと努力してくれている。そのおかげで私は、選択的夫婦別姓の話だけでなく、住民としての意見や生活での困りごとなどを議員に相談するようになりました。選択的夫婦別姓に注意を払ってこなかった議会が動くきっかけを作ることができました。
例えば、自民党のある重鎮国会議員は、2年前に初めて面会しましたが、資料を見せながら説明すると理解してくれました。それまではただ知らなかっただけのようでした。
「誰一人取り残されない社会を作る」と各方面で発言する議員なので、困っている私たちを応援してくれるようになりました。大事なのは、自民党の重鎮議員に夫婦別姓は脅威でないと知ってもらうことでした。