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繰り返される虐殺 人類全体の問題:作家V・タジョさんが日本で講演―文学者の役割を強調

繰り返される虐殺 人類全体の問題:作家V・タジョさんが日本で講演―文学者の役割を強調

This article has not yet been translated. コートジボワール人作家で、フランス政府から芸術文化勲章コマンドゥールを授与されているヴェロニク・タジョ(Vélonique Tadjo)氏が来日し、3月に東京大学で講演を行った。アフリカ・ルワンダで起きたジェノサイドを元にした小説「神(イマーナ)の影(原題L’ombre d’Imana, 英題The Shadow of Imana; Travels in the Heart of Rwanda)」を2000年に発表している同氏。それを解題し、「凄惨な出来事を人が直視し、様々な角度から考え続けることは、将来それの抑止につながる」と語った。参加者約180人は生存者の証言や記憶を受け取る意義について考えた。 旅行記と創作物語で想像促す タジョ氏を招いたのは、同大学とそこに拠点を置くアフリカ文学研究者ら。同書の日本語訳を19年に発刊、すぐ翻訳記念をと考えていたが、新型コロナで延期されていた。 同書は、1994年に虐殺が起きたルワンダをタジョ氏が訪れ、現地の人から
Miwa Higashimuki
Unfiltered On the Ground 議員と話し、地道に夫婦別姓を訴える

Unfiltered On the Ground 議員と話し、地道に夫婦別姓を訴える

This article has not yet been translated. 選択的夫婦別姓・全国陳情アクション 上田めぐみさん 私が中学生だった1990年代前半には、民法改正要綱を答申するための法制審議会が開かれていました。メディアでも、選択的夫婦別姓(※Unfiltered 注)のことが報道されていたので、気になっていました。 「なぜ女性ばかり姓を変えるのか」ということに疑問を抱いていたのですが、そのことに関して話をできる人が周りにいませんでした。 もやもやした気持ちのまま高校に進学したところ、家庭科の先生が授業でこの話を取り上げてくれました。 当時、家庭科は女子だけが受ける授業。結婚しても改姓したくない同級生が他にもいたので、自分だけではないこと、自分の考えは間違っていない、という確信が持てました。 選択的夫婦別姓の問題をもっと学びたいと思ったので、メディアで広く発言していた立命館大学の二宮周平先生のゼミを迷わず選択。家族法やジェンダー論を学びましたが、学びを深めるためにイギリスの大学院へ進みました。
松元 ちえ
東南アジアの労働者や地域が 日本の焼却炉に反対するわけ

東南アジアの労働者や地域が 日本の焼却炉に反対するわけ

この記事は、以下の団体からの支援を受けて執筆され、Asian American Journalists Association (AAJA) から Journalism Excellency Awards 2023を受賞しています。   渡辺歩さんは、東京都の清掃労働者だ。毎朝、都内の渋滞を避けるために午前6時に家を出て、朝8時に職場に着き、東京23区の各家庭や事業所のごみを収集する。日によって、資源ごみや不燃ごみ、そして最も量の多い可燃ごみを回収する。 薄いプラごみや布、汚れた紙製品などの有機物は、都内の清掃工場へと運ばれる。この工場は、東京23区清掃一部事務組合が操業する。東京23区内では、工場がない中野区や荒川区、工場が2つある練馬区や世田谷区もあり、清掃工場は全部で21区に位置する。大阪で1960年代に近代的なごみ焼却場が操業して以来、70~80年代にかけての急速な経済発展とごみの増大に伴って、日本では大半のごみが焼却されてきた。 リサイクルが進むと同時に人口の高齢化が加速しているため、日本ではごみの量が減る一方だ。現在、全国で1千件の清掃工場が稼働しているが、焼却炉の
Nithin Coca
社会とつながり直す 自分を取り戻す

社会とつながり直す 自分を取り戻す

快晴だがビル風が強く叩きつけた2021年3月14日、幸子さん(30代、仮名)は都内新宿区の大久保公園で実施された「女性による女性のための相談会」に現れた。 新型コロナ感染が拡大する中で、短期契約の仕事も見つからなくなり家賃を2カ月滞納しているという。住宅確保給付金はとりあえず申請したが、所持金は3千円と小銭だけ。話を聞くと、こんな事情があった-。 幸子さんは、中学生の時から細胞に関する研究書などを読み漁り、高校では成績も良く、生物学者を目指して猛勉強した。世界の偉人伝シリーズで魅せられたのは「ファーブル昆虫記」や「シートン動物記」。生物の起源が神秘的だった。 富や名声には全く関心を持たなかったが、知識や情報には貪欲だったという。これには訳がある。幸子さんにとって、本の世界だけが唯一、家にいても安らげる場所だったからだ。 両親からの虐待 幸子さんは親から毎日のように虐待を受けていた。母親からはずっと嫌われていたような気がする。父親は彼女の機嫌をとるために幸子さんを殴るような人だった。腐りかけのご飯を出されたり、食事にゴキブリが乗っていたこともあった。完食するまで半ば軟禁状態で父
Chie Matsumoto
「路上から安定就労へ~女性相談会で私は変わった」

「路上から安定就労へ~女性相談会で私は変わった」

This article has not yet been translated. いまも続くコロナ禍はとりわけ女性に厳しい試練をもたらした。一方で、「女性による女性のための」支え合い活動が各地で立ち上っている。そうした危機的状況の中での新たな「出会い」がある女性の暮らしを大きく変えるきっかけにもなっている。 (メグさんの場合・前記事はこちら) 「この数カ月で1年分くらいの『ありがとう』を言っていますよ」 昨年、メグさんは、背筋をのばして少し照れ臭そうに話しはじめた。 関西出身のメグさんは20代でファストフード店の正社員職を見つけ、結婚を前提に交際していた男性もいた。しかし、二人の新居に母親が「同居したい」と言い出したことをきっかけに破談。家を飛び出して水商売に浸かり、デリヘル嬢として生計を立てていた。 病気をしたことで鬱状態になっていたメグさんは、気分を変えるために友人から3万円を借りて上京。遊びで遣ってしまった旅費を取り返したら関西に戻るつもりで、歌舞伎町の路上に立った。東京に来たのは7年ぶり。新規参入の若手が増
Chie Matsumoto
ウクライナ紛争を伝える喉と舌  マス・コミの戦争報道技術力を評価する

ウクライナ紛争を伝える喉と舌  マス・コミの戦争報道技術力を評価する

はじめに 2022年2月24日に始まった、ロシアのウクライナ侵攻についてのマス・コミ報道をアンフィルターとしての目線で批判・検証したい。本稿は、デイビッド・マックニール記者から示された、日本のテレビ報道が現地取材を避けている状況を検討した論考を踏まえ、そこで示されなかった領域にも焦点を当て、ウクライナ侵攻についての報道の問題をさらに深く議論する材料としたい。 ウクライナ侵攻に関する歴史的背景 現在のウクライナ紛争を読み解く前提として、歴史的な背景を把握しておく必要があるだろう。しかし、多くの日本人にとって旧東欧諸国の一つにすぎないウクライナの歴史などはほとんど関心がなかったのが実態であるはずだ。加えて言えば、アメリカの政治学者イアン・ブレマーがNHK教育テレビETV特集(『ウクライナ侵攻が変える世界』※Unfiltered 注)のインタビューで答えていたが、ソ連崩壊以降の30年間、西側全体がこの地域に無関心だった。そのような西側目線からみると、なぜ、プーチンのロシアがウクライナに固執している(ようにみえる)のか理解し難いだろう。これには第2次世界大戦の独ソ戦から見直す必要がある。
OATES.