除染作業が進み、空間線量が年間20mSv以下で「安全」なのか

除染作業が進み、空間線量が年間20mSv以下で「安全」なのか

除染作業が進み、空間線量が年間20mSv以下になったから「安全だ」として避難指示が解除されたことで、避難していた多くの公務労働者が「帰還を命令され」戻っている。しかし、今も空間線量の高い場所で働かざるを得ないことに不安を抱えながら働く人々の労働の実態はどうなのか、放射線被ばく管理は適正に行われているのか、健康管理は万全を期しているのかが不透明であり、編集部ではこうした帰還政策の中で新たな被曝を余儀なくされている労働者や職場に焦点をあてて労働者の率直な声に耳を傾けていきたい。

除染が行われていない森林で働く森林管理局の方の今回話を聞くことが出来たのは林野庁の地方機関である福島県内の森林管理署で働くアラフォーの畠山良夫さん(仮名)

森林管理署の仕事は、「森林を育成し、木材を売却して利益を上げ、植樹などで造林すること」だ。当然のことながら仕事場は森林の中となる。
畠山さんは林野庁に採用されて以降、関東甲越のいくつかの管理署で働いてきた。今回の取材申し込みを快く引き受けていただいた。
「私たちの仕事は森林を育て、木材を売る。かつては現業と呼ばれた仕事です」と開口一番自信に満ちた言葉で語る姿に、仕事に誇りを持っていることがうかがえた。
「日本の国土は70%が森林で、その内の40%が国有林です。福島県はほぼ全国平均と同じですから、道路周辺は別にして視界に入ってくる山は国有林が多いです」
伐採した木材を売り、伐採後には植林をして(造林)育てていく。売却できるまでは長い年月が必要である。そうしたスパンの長い仕事に畠山さんは自信をもって携わっている。

―畠山さんはどの位の頻度で山に入るのですか―
「ならすと週一回ぐらいですかね。私は管理署の方なので管理監督業務が主ですからそんなに多くはないです」

-森林事務所の方はどうですか-
「森林事務所はいわば警察で言えば街中の交番のような最前線の存在なので天気が良ければ高い頻度で山に入っています」

-山に入るときに線量計は持っていくのですか。ガラスパッチはどうですか-
「はい、線量計は持っていきます。ガラスパッチはないです」

-ホールボディーカウンターでの調査はやっていますか-
「いや、それはないですね」

-するとどの位被曝したかは分からないですね。内部被ばくについても-
「確かに、そうですね。今は空間線量が0.5µSv/h以下のところで立木の伐採搬出が行われています。それ以上の処は調査をしてからとなります。2.5µSv/h以上の処は通常業務では入りません。セシウムは殆どが土壌に存在していて、2.5以上の処の土壌は1万Bq/㎏以上の放射線量がありますからね」

-畠山さんも伐採作業などやるのですか-
「私たちは監督業務ですので実際の作業は外注先である森林組合等の林業事業体の方がやります。ただ森林の木材の調査の時は一回6時間ぐらい入ることもあります。木の太さ、高さ、本数を調査するのです。全域をカウントするわけではなく一定の広さを調査して全体を推計します」

-そうした作業の時は森に分け入るので舞い上がる粉塵など気になりませんか-
「そこまでは気にしていません」

-受注者の方もきちんと線量計を持って山に入られているのですかね-
「それはどうかな。わからないです」

-当局は放射線管理について受注者に何か指導はしてないのですか-
「契約の際の書類には放射線障害防止のためのガイドラインを遵守するよう記載されていますが、作業する場所は空間線量が2.5µSv/h以下の処なので、対策がとられているかチェックする体制にはなっていません。」

-伐採作業というのは何人ぐらいで入るのですか-
「一概には言えませんが1セットで4~5人。チェンソー作業、重機作業、運搬で一つのグループです」「植林した後は結構山に入ります。植林した木を育てていくのは、下草刈りとか含め結構手がかかりますので」
畠山さんによれば空間線量が0.5µSv/h以下の処は無条件に作業OK、0.5から1.0µSv/hの場所の木材は樹皮を持ち帰り、樹皮の放射線量を測定してから作業の可否について判断する。1.0~2.5µSv/hの場所は伐採しない、2.5µSv/h以上の区域には立ち入らないというのが現在の基準になっているという。0.5µSv/h以下の場所の木材であれば指定廃棄物となる樹皮は出ないというのが経験的な積み重ねから判断できています。

-各エリアの空間線量は管理署の方々が測定しているのですか-
「いえ、測定は測定会社に外注しています。そこの方々は高線量の処にもはいっていきますね」「ただ私たちも土砂崩れがあったり、災害、たとえば山火事など、昨年ありましたけど、発生したりすると結構線量の高いところにも入っていきます。線量計の警報がなると早くその場を立ち去らなければという気分になります」

-山は均一に汚染されているわけではないでしょうから、ホットスポットのような場所もあるでしょうね-
「そうですね。基本森林は除染していませんからね」

-木材を売るというのが基本的な仕事ですから、福島県産の木材を売らなければならないし、汚染されている可能性があるとジレンマもあるでしょうね-
「木材市場では今は放射線量を検査する体制ができています。全国の木材が流通して市場に入ってきますが、ラインを流す中で検査して出荷しています。何Bq/㎏以下なら出荷するかはちょっと忘れましたが、チップ材の場合は100Bq/kg以下ですので食品と同じですね」

-福島県では福島県産木材で住宅を建てると補助金が出ているようですが、他県にも出荷されていますかね-
「出ているのもあると思います」​

-事故から7年たって職員の方々の被曝に対する不安とかは如何ですか-
「最近は震災時には県外にいた職員も増え、管理職も他県からから異動してきた方が多くなり職場での問題意識が薄れてきていますね。私も山に入るときに線量計を忘れてしまうこともあったりして、あまり気にしなくなってしまったところがあります」

-私たちはやはり低線量被曝であっても様々な健康障害が出ているという報告があるし、放射線被ばくには閾値がありませんから、福島県内で働く労働者には出来るだけ被曝を少なくしてもらいたいという思いがあり、健康管理のための様々な対策を国としてきちんととってもらいたいという思いから、今回いろいろな職場で働く皆さんに焦点をあてて声を聞き取っていこうと思っています。今日は忙しい中、ありがとうございました-